후리가나로 읽는 일본 고전
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
吉川 英治의 江戸三国志(えどさんごくし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 577,271자 · 1141화면
ヨハンの母性的な慈愛は、巷の苦しみと寒さに凍えていたお蝶の心に情けの温みを知らしめたようです。彼女はもうヨハンに甘える気持は出ても、反逆的な心は持てなくなりました。
除夜も元日もない石牢の奥に、そうして幾日か匿われている間に、ヨハンはお蝶がいやがらない程度に、聖書を読んで聞かせ、羅馬の都の話をして聞かせ、ひたすら彼女の心の故郷から善を呼び起こそうと努めたのです。ローマ王家の血を享けている彼女の自覚を醒まそうとするのでした。
ヨハンのその努力は、天童谷の時では厳父が説き諭す形になって現れ、ここでは慈母の愛をとって教えました。そうして、この頃ではようやくその真心がお蝶の心にもしみ入って来たか、時折は、彼の読んで聞かせる聖書の声をじっと聞いているうちに、お蝶の頬を涙が流れることもある。
そういう時に、ヨハンは殊に力をこめて、
「あなたの大きな幸福は、羅馬の都に待っています。夜光の短刀をお探し遊ばして、海の彼方へお帰りなさい。そして、絶えかけている王家の家名を興すことができれば、二官殿の霊もどんなに満足か知れません。いいえ二官殿ばかりでなく、日本へ渡って鬼となった羅馬の使徒の幾十人の霊が、みな天国でどよみをあげて欣びましょう」