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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
軍や右翼に弱い警察が、そういう要領を俺に覚えさせた点もある。
「おい、その鮮人、こっちへ来い」
そんな声を俺は背後に聞いた。たった今、俺にお辞儀をした刑事が、八つ当りの声で、
「トランクをあけろ」
船で釜山へ渡り、京城行きの汽車に乗った。車窓からの景色は、国外に初めて出た俺には何もかも物珍しく眺められた。わけても俺の目をひいたのは、内地で(日本を内地と言っていたのだ)見られないハゲ山の連続だった。木が一本もなく、あか土の地肌がむき出しになっている。朝鮮の山とはこういうものなのか、そう早呑みこみした俺は、このハゲ山が乱伐の結果なのだとは知らなかったのだ。
車窓のすぐそこに見られる低い丘も、草ひとつないあか土の露出で、それがなだらかなというより不気味な起伏を描いている下に、怪奇なキノコでも生えているような形で、朝鮮の百姓家がごたごたと並んでいる。白い乾いた道に、風が濛々と土ぼこりを吹き立てているなかを、よごれた下袴をはいた朝鮮の女が、痩せこけた半裸の子供をつれて歩いているのが見えた。俺はぐっと胸が迫った。死んだおふくろを思い出したせいもあるが、それだけではない。