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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

その四 走狗

何事も知らないで、東京へ連れて行かれることも知らないで……。

その四 走狗

根室から札幌に出て、札幌から函館に行き、青函連絡船で青森へ渡り、それから上野まで――こうながい汽車の旅では、いくら急行でも、おやじの死に目に会うことができなかった。それどころか東京に着いたときは、おやじはとっくに骨になっていた。北海道とちがって東京はヤケに暑く、屍体がもたないんだそうだ。

兄貴の女房と俺は初めて会った。俺が北海道へずらかる前に、それよりだいぶ前に兄貴の五郎は結婚していたのだが、静枝というその嫁さんと会うのは初めてなのだ。三つになる男の子がいて、これが俺たちの赤ん坊を珍しがった。珍しがるなんて言い方はおかしいが、女の子じゃないんだから赤ん坊好きというのとはちがうのだ。その男の子だって三つと言えばまだ赤ん坊みたいなもんだが、自分より小さい志奈子に好奇心を持ったようで、そばにくっついて離れない。頬っぺたを指で突っついたりしているうちに、その指を志奈子の口の中に入れて、わーっと泣かせて、

「いけません、二郎ちゃん」

と静枝に叱られた。二郎とはおやじの命名だなと俺は思った。