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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
第四章
その一 痛快な破壊
「上海で稼いでくるかな」
と俺は言った。波子は黙って俺の顔を見ていた。
「――カタキも取りたいが」
慷堂と相談して、北槻大尉を殺した奴らに対してタタリ(報復し)たいと思っていたが、その慷堂も殺された。
「これでは、手も足も出ない」
「気晴らしに、そいじゃ、上海へ行ったら……」
いつの間にかモクをおぼえた波子が「朝日」を口にくわえて言った。
第四章
その一 痛快な破壊
こうして俺は年があけると間もなく上海へ渡った。渡るについては、きっかけがあったのだが、俺としては自分から進んで、自分の意志で上海へ行くのだという気持だった。その気持のなかには、殺された慷堂を、そして北槻大尉を、これは裏切る行為だといったやましさはなかった。
上海行きのきっかけというのは、丸万の誘いで、
「一緒に行かないか」
遊びに行ってみないかと在京中の丸万が言った。気楽にどうだと言うのだが、丸万と一緒ということは、丸万と同じように砂馬の子分格になることなので、それが俺には不本意だった。
「上海は今や五館の天下だ」
面白いぜと丸万は言う。五館とは賭館(バクチ場)、煙館(阿片吸飲所)、飯館(料理店)、舞館(キャバレー)、殯儀館(死体預り所)。