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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「悲堂先生にもお会いしたそうです」
「それは梶川悲堂から聞いた。砂馬君を面白い男だと言っとったが」
この慷堂は――砂馬の話だと、悲堂が国民政府から招かれたときに同行をすすめたけれど、ことわったのだという。ひとしく支那革命に献身した二人だが、先輩格の悲堂にだけ招待が来て、慷堂には来なかった。そこで悲堂はもし慷堂に同行の意志があるなら、自分と一緒に慷堂をも招いてくれるようにと向うに申し込んでみると言った。向うから万一その承諾が来なかった場合は、自分も行かぬとまで慷堂に言ったそうだ。
それを慷堂はことわった。同行をというより中国行きをことわった。抗日を叫んでいる中国へ行くことを潔しとしなかった。そしてさらに、ことわった理由はそれだけでなく、慷堂が昔とちがって今は国家主義者になったらしいと向うでそう見ていて、そのため悲堂だけを招いたのだと思われるからだった。
「砂馬さんも悲堂先生に敬服してました。悲堂先生に近い気持かもしれないな」
旧同志の砂馬を俺は一応かばったのだが、慷堂は俺のその言葉への返事みたいに、シュロで作ったハエたたきを、ぴしゃりと鳴らして、
「今年はどうしてこうハエが多いんだ」