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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
その指導部の幕僚将校と、ある夜、俺は赤坂の待合で会った。北槻中尉が俺を連れて行ったのだが、俺は元来、こういう高級待合は嫌いだった。庶民的な淫売屋や女郎屋は嫌いじゃないが、いや、大好きだが、こういう待合は、本質において淫売屋とかわりはないくせにオツにすましてやがると俺は嫌いだった。ブルジョアが独占していることへの憤りもあろうか。
「幹部にひきあわせる。会っといたほうがいい」
と北槻中尉がすすめるので、俺はそのキスバ(宴会)へ行ったのだ。でなかったら、行きはしない。
赤坂は生れて初めてだった。神楽坂の安待合などとは、すっかりちがう。オカグラ(神楽坂芸者)相手のシャボツリ(芸者遊び)とはまるでちがう。俺は自分のカワゲソ(靴)がきたないのに気がひけた。それだけに俺は、
「こんなところを根城にしているのか」
けしからんといった語調で中尉に言った。祇園で遊んでいた大石クラノスケの故智にならって、世間の眼をくらますためだろうか。
この赤坂は軍人のお客で栄えたところで、ここでは軍人が大威張りなのである。そんな歴史を俺は知らなかった。
広い座敷で華やかな宴会がひらかれていた。