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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

よく知ってる」

「うそつけ」

「あんたと、おつきあいはないがね。あんたの憑きものとは仲よしだ」

「こりゃ、ほんものの気ちがいだ」

「気ちがいじゃない。ひょうたん池のアビルだよ」

アにアクセントをつけて言ったが、

「浴びる?」

「池のアヒルだろう」

とクロトンビがあざ笑った。そのあとから、俺の隣りの男が、

「お巡りか、このおっさんが。よせやい」

巡査の隠語がアヒルとは俺は知らなかった。

「アヒルとお巡りは、ゆっくり歩き回るからな」

と隣りの男が言った。

その日の昼食はアカレンガ(塩ザケ)のおかずだった。羅漢はその箱弁を、まるで大変なご馳走のように、舌鼓を打って食べた。いじきたなさを丸出しにしたみたいな食い方だった。それをいささか幻滅的と見たのは、この「ちょいと、ちょいと」の羅漢に、ちょいと心をひかれるものがあったせいだ。

ためしに――そんな気持で俺が食い残しをやると、

「へ――かたじけない」

ミイラみたいな手を出して、俺の箱弁をおしいただくようにした。今とちがって、シャケは――塩ザケは最低のおかずだったのだ。

そうだ、ここでいっそ呑気に、箱弁のオカズの話でもしようか。アカレンガはシャケで、シロレンガは豆腐のことだ。