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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「だって……」

波子は非難とも取れる表情で俺をみつめて、

「あたしんとこへ今日、変な人が来たのよ。四郎さんのことで……」

「サツ――警察の奴か」

そうじゃないのと波子は言って、

「また警察に追われてるの? そんなときじゃないと四郎さんは……」

「この前も、そう言えば、俺がつかまりそうなときに、波ちゃんが助けてくれたな」

今度も助けてくれと言わんばかりの虫のいい言い方になっていた。訂正しようとすると、

「またどこかへ逃げたいの? でも、もう手助けはいやよ」

急にこれはきっぱりと言った。いい気になっていたら、ぴしゃりとやられた形の俺は、俺だって手助けを頼みに来たわけじゃないが、にべもない語調でことわられると、いやな気がした。でもそれを口に出しては言わなかったし、言えもしなかった。

「カタギになってと頼んだのに、あたしの言うこと聞いてくれないんだもの」

低く波子は言った。

「ごめん」

波子の前だと俺は人がちがったみたいに弱気だった。

「寒い往来を、いつまでも歩かせる気なの?」

この波子は俺の前だと、逆に強気になるのか、ものでも投げつける勢いでぽんぽん言うと、肩のショールに手をやって顔を埋めるようにして、