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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
その三 ヨーヨーのころ
小さいな」
「ありがとよ」
と俺はおどけて言った。それだけ聞けば充分で、もう、探りの必要はない。
朝倉の案内した宿屋は、丘陵の中腹にあった。門の前に千島桜が咲いていた。
その三 ヨーヨーのころ
二階の奥の一番大きな部屋に陣取った矢萩は、俺の顔を見ると、
「しばらくだったな」
砂馬の家で一度会っただけなのに、まるで古くからの知り合いのように俺に言った。
部屋には矢萩のほかにもう一人いた。宿屋のどてらを着込んだ矢萩の横に、これは三つ揃いで、子分然として控えているその男のほうが、俺には旧知の顔として迫った。俺が無意味な人殺しをしたとき、傍でそれをにやにやしながら見ていた男である。
「よオ」
と俺はその男に――矢萩に挨拶するより前にいちはやく声をかけた。男は黙ってうなずいたが、その顔には機先を制せられたにがにがしさを出していた。同じような表情の矢萩に、
「やあ」
と俺はお辞儀をして、
「不思議なところへお越しですな」
矢萩を立てた言い方をすると、
「なーに、阿寒湖へ行ったついでに、ここへ寄ってみたのさ」
「ついでに?」
阿寒湖から根室までは、ついでにと言えるような近さではない。