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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

もしも志奈子が東京で生れていたら、おやじから一子とでも名づけられていたことだろう。

「この子は、ほんとに乱暴で……」

困るというより、それを面白がるみたいな顔で、静枝が俺に、

「今日はこうして賑やかなんで、家んなかにじっとしてますけど、なんせ、うしろはすぐ川でしょう? あぶなくて目が離せないんですよ」

親ゆずりの性質かしらと、これは兄貴に言った。

「乱暴なのは俺よりも……」

と兄貴が、女親のせいだろうと言いたそうだったが、

「四郎のほうだ」

と俺に言った。

叱られた当座は二郎もおとなしくしていたが、やがてまた志奈子にいたずらをはじめ、

「駄目、駄目」

と静枝が叱った。

「いいんですよ、お姉さん」

と波子は言った。いかにも義姉に取り入ろうとするような声で、それが俺にありありと感じられるのはいやだったが、同時に、波子の奴、なかなか如才がないと、そこに一種の安堵もあった。

おやじが死んで、この家は兄貴のものだ。兄貴夫婦に今後は頼らなくちゃならないと、義母は小さくなっていたが、

「二郎ちゃんには、ちょうどいいオモチャ……」

と俺の子供をオモチャ扱いしやがった。波子に負けてはならじと、静枝にお世辞を使っているのだ。