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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
俺の剣幕に恐れをなして静枝は口をつぐんだ。これは綾子とちがう。
部屋の隅で、腹違いの弟の三郎が、何がおかしいのか、ニキビ面をにやにやさせていた。白けた座を取りなすみたいに兄貴が、
「おやじに、四郎の子をひと目、見せたかったな」
俺はちょっとしょげて、
「おやじの死ぬ前に、俺も親不孝の詫びをしたかった」
殊勝なことを言うな、そんな顔ではなく兄貴が、
「北海道へまた帰るのか」
「帰らない」
ぽつんと俺は言った。沈黙が来た。
「あたしも、お父うさまにお目にかかりたかった」
と波子が控え目な声で言った。兄貴はそれに、こくんとうなずいて見せて、「ゴールデン・バット」の箱から細いマキモヤ(煙草)を出して、
「帰らないんだったら、どうだ、うちで働いちゃ」
俺にも煙草をすすめたが、俺は首を振って、
「そうもいかないんだ」
鋳物屋の手伝いなんかいやだというのではない。俺の身にもしものことがあって、兄貴に迷惑をかけるのを恐れたのだ。俺は波子に顔を向けて、
「こいつの籍もまだはいっていないんだ。東京へ出てきたからには、思いきって、いれるつもりだが」
「思いきって?」
と静枝が、あきれたように言って、