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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

年貢の納め時というにしちゃ、大したこともしちゃいねえのにと、俺だってくやしかったが、じたばたするのはやめた。死にたくはなかったが、死ななきゃならねえのなら、しようがねえや、死んでやろう。

死にゃいいんだろう、死んでやろうと、あっさりカブトをぬいだら、死神も俺の潔さに感心したのか――と自慢するのもおかしいけど、全くそんな感じで、感心というより拍子抜けかもしれないが――また来るよと言って去って行った。死神のその声を俺は実際この耳で聞いた気がした。寝たっきりの生活が待っていたが、とにかく一応、死からは免れた。

三度目の死にぞこないだ。三度目だと思うと、最初の死にぞこない、二度目の死にぞこないのことも俺の心に来た。二度目のときの京城のあの猫が思い出された。おやじが死ぬ直前に姿を消したと、兄嫁から聞いた猫の話と結びついて思い出された。前にあげた猫の詩は、このとき書いたものである。こうした詩を、詩のようなものを、俺は病床でいくつか書き綴った。つれづれなるままに書いたのだが、単なる暇潰し、うさ晴らしともちがう。またそれは、詩というものを書こうとして書いたのではなく、俺の心をそうした短い詩形で現わそうとして書いたのである。