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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

俺を昂奮させた丸万のせいか、肺病には毒な陽気のせいか。病床に倒れてから一年目、また振り出しに戻ってしまった。

その年の十一月、国体原理派の青年将校がクーデターを企てた。俺が倒れる直前、慷堂の家で会った将校たちが首謀者だった。北槻大尉も(彼はこのとき大尉になっていた)もちろんそれに加わっていたと思われるが、その名は表面には出てなかった。議会開会中をねらって、元老重臣を襲撃し、「国体の真姿を顕現」するためのクーデターを行おうとしたその計画は、俺が関係した三月事件、十月事件と同じような性質のものだったが、それらの事件とこれまた同じように決行直前に発覚して、未遂に終った。

軍法会議の取り調べの結果、証拠不十分ということで事件はこの場合も簡単に片づけられた。混乱を避けるためだったろうが、首謀者の青年将校らが単に停職を命ぜられたにすぎなかった。

しかしこの処分に対して青年将校らは憤激した。この事件は統制派が皇道派をおとしいれるためにデッチあげたものだと主張した。青年将校の支持する真木大将らの皇道派を軍の実権から遠ざけ、軍の指導権を統制派が完全に掌握しようとして、この十一月事件というようなものを捏造したのだと騒ぎ立てた。