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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
停職処分を受けた青年将校はここでさらに退職を命ぜられた。かくて軍内部の派閥の争いは、統制派と皇道派の対立にしぼられて行った。北海道から百成綾子が上京して俺のアパートに訪ねて来たのは、ちょうどこの頃だった。俺の病気を金原から聞いたと言って、北海道のバターをたくさん持ってきてくれた。
「金原さんは上海へ行きましたよ」
遠くに眼をやる表情で綾子は言った。俺のところへはそれを金原は知らせてこなかった。
「あたしも、よっぽど一緒に行こうかしらと思ったんだけど」
俺は口をきくのが億劫で黙っていると、
「奥さんは?」
綾子が妙なことを言った。
「お別れになったの?」
「いや――どうしてです?」
綾子との会話を書いて行くと、そのままずるずると話がそれる恐れがあるからこれなり省略して、本筋の軍の対立のほうを急いで語ろう。
翌年の七月に皇道派の真木大将が教育総監部から追われた。真木大将は辞任を肯んじなかったが、統制派の圧力に押されて結局、退陣を余儀なくされた。この更迭は皇道派を激怒させた。
翌月、統制派の長田軍務局長が陸軍省内で白昼公然と刺殺される事件がおきた。犯人はもちろん皇道派の将校である。