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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

感動と言ってもいい。さらに芸術的感動とでも名づけてもいいような、非論理的な、あるいは超論理的な昂奮だった。俺は詩人だと言ったことが、こんな昂奮を俺のうちに目ざめさせたのだろうか。

眼前の惨憺たる風景は、それが何を意味するかということと全く絶縁した、全然無関係な、痛快な破壊を語ることで、俺を昂奮させ、不思議な解放感と、そして同時に確実な充実感を俺にもたらしていた。その解放感というのは、たとえば暗い地下牢にとじこめられていた者が青空を仰いで胸を躍らすのとそっくり――と俺は感じたのだが、では、充実感のほうは? これはたとえ話でなく、俺自身に即して言えば、病床の俺は自分に白い空洞を感じたが、その空洞に何かがみたされたのである。

そうした俺の眼前にあるのは――もう一度くりかえして言うと、特定の中国の町でもなければ、かつての激戦地といったものでもなく、破壊そのものだった。それは俺に、あの十月事件の直前、丸万と夜の東京を見おろして、暴動を夢想したことを思い出させた。

あのとき暴動がもし実現していたら、東京の街もこうなっていたかもしれぬ。

こうならなくてよかったというのではない。