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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

それを「夜這い」と嘲ったのだが、ボル派の奴らは今ではみんなこの手を使って、アナ系の組合にはいっている労働者のところへ「夜這い」に行って、くどき回っていた。

「夜這いに対抗するために、俺は工場の連中と研究会をやろうと思っている」

「研究会って、おめえが労働者を教えるのか」

と丸万は無精ひげをはやした口をゆがめた。ひげの濃くないたちだが、だからよけい、しょぼしょぼした無精ひげが変に目立つ。目立つ無精ひげは、嘲りをも目立たしめた。

おめえみてえな無学な奴が――と丸万は俺を軽蔑したのである。と同時に研究会なんてもので啓蒙しようなどとは、しゃら臭えと、労働者出身の丸万はそのこと自体をも軽蔑したのである。

「ボルの真似みていで、いやなんだが」

年下の俺は弁解した。

「なんせ、夜這いの奴らが、アナは無理論だなどとぬかしやがるから、やっぱり、その、俺自身もアナーキズムの自由連合主義の理論を一緒に勉強し直そうと思ってるんだ」

「勉強だ?」

丸万はせせら笑って、

「勉強で革命ができるかよ」

「そりゃ、そうだが」

「おめえは生じっか、中学なんか出てるもんだから、大分、インテレかぶれのところがあるな」