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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「好拉好拉」

ロクは勝ち誇った声で、

「さ、乗りましょう」

一台の車に二人で乗ろうと言う。ひとり乗りにしては、はばが広く、アベック用なのか。だが、オカマと同乗はあんまりいい気持のものではなかった。

オーバーを着込んだ俺たち二人を乗せた重い車を曳いて走るには、老人の脚は細すぎるようだった。ロクはしかし、

「火焼、火焼」

早く早くと鞭打つように言った。

「大分、まけさせたようだな」

可哀そうに――まで言わせず、ロクは、

「こっちをトーシロと見ると、法外な車賃をふっかけて来ますからね」

「こっちが法外にまけさせたんだろう」

「へへへ」

「いくらと値段を聞くのは、シナ語でなんて言うんだ」

「チデア。高かったら、アラプヨ。いらない、外の車に乗ると言ってやれば、いくらでもまけますよ」

うしろからトラックが疾走してきた。よたよたした俺たちの黄包車をつっかけそうで、

「あぶないね」

「当心(気をつけろ)。当心」

とロクは車夫に言った。何が入れてあるのか、ふくらんだ袋をいっぱい積みあげたトラックは俺たちの車を、ひゅーっと抜いて行った。と思うと、急に速度をさげた。右へ曲るのだ。このとき、道ばたにうずくまっていた浮浪児めいた少年が数人、さきを尖らせた竹の筒をいずれも手にして、車道に飛び出した。