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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
その頬には平手打ちの跡が赤く、みみずばれのように残っていた。
「チョッキを直してきましょう」
と照子は初めて口を開いた。
「チョッキ? うむ」
当然だと言わんばかりに横柄にうなずいて、矢萩は上衣を脱いだ。次にチョッキという番になって、矢萩はチョッキの内側にそっと手を入れた。
あすこにピストルを入れてるなと俺は見た。矢萩の奴、ピストルをどうするか。チョッキにピストルを入れたまま、照子に渡すかな。矢萩はピストルをやはりチョッキから出そうとしている。俺はとっさの思いつきで、俺も自分のチョッキの内側に手を入れ、照子の作ってくれた袋からピストルを素早く取り出した。
「なんだ、それは」
矢萩がきっとなった。俺はにやりと笑って、
「照子さんをパチンコでサルカス(殺す)気かと思ってね」
「なにを言ってやがる」
「そうでなきゃ、いいんだ」
言いながら、俺はピストルをテーブルの上に置いた。百成が貸してくれた大型のピストルである。
こうなると矢萩も自分のピストルをテーブルの上に置かざるをえない。そうしてチョッキを脱いで、おいと照子に渡した。照子は矢萩のチョッキを持って、無言のまま部屋を出て行った。