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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

その六 過去の中の現実

俺が俺に命令している声だ。

――いや、待て、俺は、なんだってこんなことをべらべらと語っているのだろう。懺悔だろうか。

これを懺悔だなんて思う奴、失礼、お方もあるだろう。そういうお方は、さぞかし俺のことをお脳のスベっこい(バカな)奴とお思いになることだろう。

「無意味な殺人ばかりしてる……」

とお思いのことだろうね。ほら、その顔にちゃんと書いてあらあ。隠したって駄目だ。顔は言っている。

「バカな人殺し……」

バカ――はいいが、人殺しと、ひとごとみたいに言うのは、ちょっと待って貰おう。そう言うお前さん、お前さん方、カタギのみなさんは、そいじゃ、人殺しをなさったことがないのかね。

そりゃ、なるほど、ハジキを使って、人さまをネムらせたことはないかもしれないね。犯罪になるような殺人はなさってないだろう。

しかし、犯罪にならない殺人のほうが、ずっとタチが悪いんじゃないかね。悪質じゃないかね。

どうだい、君! 君は人殺しをしてないか。してないとは言わせない。知らずに人を殺している君のほうが、罪は深い。

たとえば君の野心、あんたの功名心が人を殺している場合がありゃしませんか。