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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「四郎さん。それはここに置いとくほうがいいわ。ここへ置いてって」

百成が貸してくれた大型のピストルのほうだけ持って、ずらかれと言う。

「こいつを置いてけ?」

俺は気勢をそがれて、

「どうしてだ」

「指紋は、あたしが綺麗に拭き取っておきます」

言いながら照子は、床に放り出したままの俺の片方のピストルを取って俺に渡し、

「これを持ってらっしゃい」

俺の手から矢萩を射った小型のピストルを奪うようにして、

「これは砂馬一家しか持ってないピストルなのよ」

「矢萩一家は持ってない?」

「ええ」

「だから、照ちゃんが持ってるわけはない?」

俺は、照子が矢萩を殺したのは自分だと、罪をかぶるつもりかと思ったが、そうじゃなかった。

「俺は照ちゃんが、俺のピストルを持って、ここに残って、俺を庇ってくれようとしたのかと思った」

「四郎さん。あたしのことを四郎さんは……」

乾いた眼をみるみるうるませて、

「そんな見上げた心の持ち主と思ってくれてたんですか」

「相変らず俺は甘ちゃんか」

「いえ、あたしは四郎さんの思うような、そんな女じゃないの」

「俺だって、照ちゃんを今、射ち殺そうと思ったんだ」

「分ってます」