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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「ほかに俺は用があったんだ」
「あ、あの帆住博士はセツルで会った人だ」
突然、俺はそれを思い出した。リン的の治療に、丸万に連れられてセツルに行ったとき、俺は帆住博士に会っている。あの帆住博士が死んだのか。
「帆住博士がどうしたって?」
「いや……」
丸万と結びついて思い出されたあの帆住博士が死んだということは、俺に何か不吉の感を与えた。
「さ、早いとこ、パチンコを返して貰おう」
そして百成はその理由を言った。
「俺はあんたの代りに、矢萩の子分にねらわれてるんだ」
「代りに?」
「矢萩をバラしたのは加柴四郎だなどとは、口が裂けても俺は言いはしない。金原だって言いはしないがね」
「すまねえな」
と俺は自分のコロシを自認して、
「オカマのロクの奴が、そんなふうに言い触らしてるのかな」
俺を庇おうとして? いや、俺を矢萩の身内にしようとしたロク自身の保身のために?
(それとも照子かな?)
窓の外を中国人の女が泣きながら、
「要不要小孩子」
と言って通って行った。乞食のような恰好で、小さな子供を連れていた。
「誰要不要小孩子」
子供を誰か買ってくれと言っているのだ。難民の女が自分の子供を金で売り歩いているのだと百成は俺に言った。