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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
と言って、ニワトリに手を出すと、嘴でコンと手の甲を突っつかれた。
「いてえ」
「よし、俺がやる」
風巻はニワトリの嘴を、えいとわしづかみにした。そして胴体を左脇にかかえこむと、ネジでも巻くみたいに、ニワトリのクビをねじった。クーとニワトリは変な声を出した。
右手でねじっただけではタカがしれてて、ニワトリは脇の下であばれた。風巻はねじったクビを左手でおさえ、右手を自由にして、その手でまた、手拭をしぼるみたいにねじった。
それをくりかえしているうちに、ニワトリのクビはよじれた古縄のようになって、
「よし、もう、いいだろう」
と地面に落した。ニワトリはぐたりと横たわっていた。
「次は毛をむしる作業か」
と俺は言った。ニワトリは爪先をかすかにヒクヒクと動かしていたが(それは俺に矢萩を思わせた)俺の言葉を聞くと――聞く? いや、実際、そいつは人語を解するみたいに、やにわにその爪先で地を掻くようにして、ひょいと立ち上った。クビはねじれたままだった。
「驚かすなよ。まだ生きてるのか」
風巻がつかまえようとすると、ニワトリは逃げた。ねじれたクビを徐ろに、もとに戻しながら、そしてそのクビから綿毛を散らしながら逃げて行く。