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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

ひとりでコウモリと戯れていたのだ。少年の俺は友人のかわりにコウモリと遊んでいたのである。

クララのいる淫売屋へ行くと、ガラスの小窓にマリちゃんが顔をのぞかせていた。せっかくのオッパイが、小さなこの呼び込み窓(通称「目ばかり窓」)からは見られない。マリちゃんはすごくどぎついドーラン化粧をしていて、その大きな顔がいよいよ大きく見え、ちょっと別人のようだったが、マリちゃんのほうでも、俺をとっさに見ちがえて、

「遊んでかない? 口アケよ」

と言ってから、クララのお馴染さんの俺と分ったらしく、

「あら、そそっかしい」

と自分で言った。

それを背中に聞いて俺は、隠し壁の前を飛んで行って、向うの小窓をのぞいた。クララはそっちかと思ったのだが、そこには砂馬にいつか啖呵を切ったあの年増が出ていた。俺は商売の邪魔をしないように、横の扉を押して、なかにはいって、

「クララは?」

とその年増の富江に聞いた。平凡だが、これが源氏名なのである。富江は黙って、奥へ顎を向けた。

「客が来てるのか」

「奥にいるんだよ」

二階へあがってなと富江は言った。二階は左っ手の、こっち側の部屋だよとつけ足した。