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ふしぎなひと
ふしぎな人
江戸川 乱歩
「たのしい二年生」大日本雄弁会講談社/講談社、1958(昭和33)年8月~1959(昭和34)年3月<br>「たのしい三年生」講談社、1959(昭和34)年4月~12月
N4 · 入门 · 新字新假名 · 44,138 字 · 89 页
一メートルもあるよこ顔が、黒々とうつり、大きな口をあけて、へんなふうにわらっているのです。
「えへへへ……」
なんともいえない、いやなわらい声が聞こえてきました。
「だれだっ。そこにいるのは、だれだっ」
小林くんが、どなりつけました。
「おれだよ、わからないかね」
かげの声が、うすきみ悪く答えました。
「だれだっ。名まえをいいたまえ」
「うふふふ……、まだわからないかね。おれは、二十めんそうだよ」
「えっ、二十めんそうだって」
たけしくんときみ子ちゃんは、まっさおになりました。
「そこには、小林くんもいるんだろう。いいか、おれのいうことをよく聞いておくがいい」
かげが、大きな口をぱくぱくやって、しゃべりだしました。へんな声です。まるで、ほらあなの中ででもしゃべっているように、ビーン、ビーンとひびく声です。
「いいか、おれは、まだ、この家のほうせきをあきらめていないのだ。あんなひどいめにあわされたのだから、そのかたきうちをするのだ。そして、明智のやつや、小林や、ポケット小ぞうを、あっと、おどろかせてやるのだ。うふふふ……、いまに見るがいい。ほうせきは、きっと、ぬすみ出してみせるからな」