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ゆだんたいてき
ゆだん大敵
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,664 字 · 41 页
三
家禄は二百石余りだったが、どういうわけか常に貧窮で、着衣はいつも継ぎはぎだらけだし、手作りの草鞋のほかに穿物というものを用いず、食事は年じゅう稗飯に菜汁というありさまだった。
……久之助は図書の噂を聞いて心を惹かれた。会えばなにか得るものがありそうに思え、訪ねてゆこうと考えながら、しかしよい折もなく年を過していた。するとある年の夏、下城しようとして二ノ曲輪をさがって来ると、うしろから誰かに呼びとめられた。
ふり返ってみると山のように草束を背負った中老の男が追って来る、炎天に笠も冠らず、日に焦けた黝い逞しい顔は、流れるような汗だった。
「そこもとは老田久之助というか」
ひどく横柄にそう訊ねた。それからふんふんと鼻を鳴らしながら、こちらをじろじろ見上げ見下ろして、
「わしは鬼頭図書という者だ」
とぶっきらぼうに云った。
「……そこもとが訊ねて来るだろうと思って待っているが来ない、わしに会う必要はないのか」
そして山のような刈草の束を負って、さっさと外曲輪のほうへ去っていった。
三
久之助がいちど訪ねたいと思っていたのは事実である、図書もまた来るのを待っていたという、いかなる意味にもせよ、「待っていた」