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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
其十一
しが、そのまま頭を天に対わし、ああ、弟とは辛いなあ。
其十一
格子開くる響き爽やかなること常のごとく、お吉、今帰った、と元気よげに上り来たる夫の声を聞くより、心配を輪に吹き吹き吸うていし煙草管を邪見至極に抛り出して忙わしく立ち迎え、大層遅かったではないか、と云いつつ背面へ廻って羽織を脱がせ、立ちながら腮に手伝わせての袖畳み小早く室隅の方にそのままさし置き、火鉢の傍へすぐまた戻ってたちまち鉄瓶に松虫の音を発させ、むずと大胡坐かき込み居る男の顔をちょっと見しなに、日は暖かでも風が冷たく途中は随分寒ましたろ、一瓶煖酒ましょか、と痒いところへよく届かす手は口をきくその間に、がたぴしさせず膳ごしらえ、三輪漬は柚の香ゆかしく、大根卸で食わする卵は無造作にして気が利きたり。
源太胸には苦慮あれども幾らかこれに慰められて、猪口把りさまに二三杯、後一杯を漫く飲んで、汝も飲れと与うれば、お吉一口、つけて、置き、焼きかけの海苔畳み折って、追っつけ三子の来そうなもの、と魚屋の名を独り語しつ、猪口を返して酌せし後、上々吉と腹に思えば動かす舌も滑らかに、それはそうと今日の首尾は、大丈夫此方のものとは極めていても、知らせて下さらぬ