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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

こともない唐偏朴、いつか大師へ一同が行く時も、まあ親方の身辺について居るものを一人ばかり仲間はずれにするでもないと私が親切に誘ってやったに、我は貧乏で行かれないと云ったきりの挨拶は、なんと愛想も義理も知らな過ぎるではありませんか、銭がなければ女房の一枚着を曲げ込んでも交際は交際で立てるが朋友ずく、それもわからない白痴の癖に段々親方の恩を被て、私や金と同じことに今ではどうか一人立ち、しかも憚りながら青っ涕垂らして弁当箱の持運び、木片を担いでひょろひょろ帰る餓鬼のころから親方の手についていた私や仙とは違って奴は渡り者、次第を云えば私らより一倍深く親方をありがたい忝ないと思っていなけりゃならぬはず、親方、姉御、私は悲しくなって来ました、私はもしものことがあれば親方や姉御のためと云や黒煙の煽りを食っても飛び込むぐらいの了見は持って居るに、畜生ッ、ああ人情ない野郎め、のっそりめ、あいつは火の中へは恩を背負っても入りきるまい、ろくな根性はもっていまい、ああ人情ない畜生めだ、と酔いが図らず云い出せし不平の中に潜り込んで、めそめそめそめそ泣き出せば、お吉は夫の顔を見て、例の癖が出て来たかと困った