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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
だが、いくら押しても手応えがない。格子に手をかけて試みると、ガラガラと大きな音を立てて、わけもなくひらいた。
「ごめんください。ご不在ですか」
何度どなっても、誰も出てこない。
「君は僕が呼ぶまで、ここに待っててください。僕はこういうものを用意しているから大丈夫だけれど、君に万一のことがあってはいけませんから」
明智はポケットから小型のピストルを取り出して見せた。神谷が承知の旨を答えると、探偵は靴をぬいで、単身薄暗い家の中へはいって行ったが、やや五分もすると、失望の色を浮かべて戻ってきた。
「やっぱり僕の想像が当たりました。誰もいません。湯殿から納屋の中まで調べてみましたが、人のいたけはいはあるけれど、もぬけの殻です。これはほんとうは空き家なんですよ。恩田が空き家を借りて、必要な部屋にだけ飾りつけをしたのでしょう。応接間と奥の方の寝室らしい洋間だけに家具があって、そのほかの部屋はがらんどうですよ。ただ不思議なのは、つい今しがた湯にはいったやつがあるとみえて、湯殿の湯がまだ暖かいことです」
明智が委細を説明した。
「どっかに隠れているのではないでしょうか。