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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
奇怪なる贈り物
「用意っていいますと?」
「さあ、その用意を、僕は極度に恐れているのです。むろん先方へ行ってみなければ、わからないことです。杞憂であってくれればいいと思うのですが、わるくすると……」
「蘭子が……」
「ええ、そうですよ。相手は人間じゃないのですからね。前の例でもわかるように、肉食獣にもひとしいやつですからね」
明智はそう呟いたまま、言いがたき不安の色を浮かべて、だまりこんでしまった。
奇怪なる贈り物
案内知った神谷青年の指図で、車が適当な場所に止まると、三人は急いで降り立ったが、明智は車内であらかじめ書き入れをしておいた名刺を小林少年に渡して、
「君は表に待っているんだ。腕時計はあるね。カッキリ十分間だよ、僕たちが高梨の家へはいってから十分間たっても出てこなかったら、近くの交番へ走るんだ。そしてその名刺を渡して、本署へ電話をかけてもらうんだ。そして、すぐさま僕たちを救い出す手配をしてくれるように頼むんだよ。わかったかい」
「はあ、わかりました」
「多分そんな事は起こりゃしないと思うけれどもね。ただ万一の用意なんだよ」
さて明智と神谷とが、高梨家の門前に近づいてみると、正門脇の潜り戸が半びらきになっていたので、構わずそこからはいって、玄関の呼鈴を押した。