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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
あいつらの巣窟を焼き払ったのも、大切な豹を銃殺したのも、みんな僕のせいなんですからね。それに今度だって、先生に事件を依頼したのは僕じゃありませんか。僕をほうっておいて、先生に復讐を企てるなんて」
「それはむろん君も恨んでいるでしょうが、あいつらの悪事の第一の邪魔者は僕なのです。まずとりあえず邪魔者の方から始末をつけようというわけでしょう。それに僕のところには、あいつには見逃せない誘惑物があるのですからね」
明智はそう言って、ちょうどそこへお茶を運んできた文代夫人と顔見合わせた。似ている、似ている。文代夫人は弘子や蘭子とソックリの顔立ちではないか。
ああ、では人間豹は、眼早くも、この美しい明智夫人を、次の獲物と狙っているのであろうか。名探偵自身の若い奥さんを誘拐しようとでもいうのであろうか。
「では、あいつは……」
神谷はぶしつけにも文代さんの顔をじっと見つめながら、あまりのことに、それとも言いかねて口ごもった。
「そうですよ。少し突飛だけれど、けだものには人間の常識なんてありやしないのだから、至極単純に、感情のままに動くのですよ。この挑戦状の文句は、ほかに解釈のしようがないじゃありませんか」