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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

言われてみると、いかにもその通りであった。なんといううまい思いつきであろう。けだものの情慾を満足させることが、そのまま名探偵への復讐手段となるのだ。あいつの考えそうな事だ。

「もしそうだとすると……ああ、僕はなんだか恐ろしくなってきました。大丈夫ですか。僕は今までの経験で、あいつの力をよく知っているのです。あいつは人間ではないのです。悪魔です。悪魔の智恵と力を持っているのです」

奥さんはよくそんな平気な顔でいられますね、と言おうとして、ぶしつけに心づいて呑みこんでしまった。

「そんな相手でしたら、面白うございますわ。明智はこのごろ、大きな事件がないと言ってこぼし抜いていたのですもの」

文代さんはそんなことを言って、可愛い八重歯であでやかに笑ってみせた。

これはまあ、見かけによらない、なんて大胆な奥さんだろう。神谷はあっけにとられてしまった。彼は文代さんが「吸血鬼」の事件で、明智の助手の女探偵として、どんなに勇ましい働きをしたかということを、少しも知らなかったのだ。

「何よりもあいつの隠れがを突きとめなければなりません。先生には何か成算がおありなんですか」