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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
だが、それはのちのお話である。
じっと辛抱して、暗闇をさまよいつづけているうちに、とうとう手ごたえがあった。ボロボロの着物を着た、はだしの乞食みたいな男が、闇の中から浮き出してきて、しばらくのあいだ、じっと彼の方をすかして見ていたかと思うと、いきなりツカツカと近づいてきて、彼に、何か紙切れみたいなものを手渡すのであった。
このものといっしょに帰れ、急に相談したいことが起こった。
紙切れを軒燈に近づけてみると、鉛筆の大きな文字で、そんなことが書きつけてあった。見覚えのある筆蹟だ。恩田の父親に違いない。
「間違いねえだろうね。お前、恩田っていう人だろう」
乞食みたいな男が、念を押すように言った。して見ると、こいつは恩田の顔を知らないのだな。知らなくても間違う気遣いないほど、恩田の顔には特徴がある。その特徴を教えられてきたのに違いない。明智はもうビクビクすることはなかった。
「ウン、間違いないよ。だが、おれのおやじは今どこにいるんだい、うちにいるのかい」
「うちだか、どこだか知らねえ。おれは芝浦で頼まれたんだよ」
ハハア、すると、あいつらの巣窟は芝浦付近にあるんだな。