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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
爺さんはちょくちょく鉄管長屋へ遊びにくるんだぜ。ほら、あすこにウントコサころがっている水道の鉄管のことさ。おれなんかも、その鉄管長屋に古く住んでいるんだよ」
ルンペンどもが、水道用の大鉄管をねぐらにしていることは周知の事実だ。すると恩田父子はその鉄管の中を、一時の隠れがにしているというわけであろうか。
そんな話を取りかわすうちに、車は芝浦の闇にさしかかっていた。
「どこへ行くんですよ。もうこの先には町がないんですが」
運転手がけげん顔に尋ねるので、そこで車を降りることにした。
車を降りて、果てしもない暗闇のなかへさまよい出した。さすがにルンペンは慣れたもので、見えぬ道をグングンと先に立って歩いて行く。眼が慣れるに従って、曇った空がだんだんほの白く見えてくる。そのおぼろな反射光が、地上のものを、うっすらと墨絵のように浮き上がらせている。
「ここだよ、今爺さんを探すからね」
ルンペンの言葉に瞳をこらすと、これはまあなんというおびただしい鉄管の行列であろう。黒い地上に、とり別けてまっ黒に見える巨大な円筒が、眼路の限り、遥かの彼方までギッシリと並んでいるのだ。