轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

檻の中

「あけてください。誰かいませんか」

と叫びつづけた。だが、いくら叩いても、叫んでも、邸内からはなんのこたえもない。

神谷はもう、あとさきを考えている余裕がなかった。いきなり扉の桟に足をかけると、なんなくそれを乗り越して、建物の入口らしい箇所へ駈けつけ、そこのドアを叩いた。

すると、今度は、存外早く手ごたえがあって、

「誰だっ、そうぞうしい」

とどなりながら、中からドアをひらいたものがある。

檻の中

ドアをひらいて顔をさし出したのは、頭もひげもまっ白な、折れたように腰の曲がった、背広姿の老人であった。

相手が案外弱々しい老人だったので、神谷は拍子抜けがして、やや穏かな口調で、

「こちらは恩田さんのお宅ですか」

と先ず尋ねてみた。

「ハイ、わしが恩田ですが、あんたはどなたですな」

老人は人殺しなどの行なわれる屋敷とも思われぬ、ゆったりした調子で答えて、神谷と閉め切った門の扉とを、ジロジロと見比べた。

「いや、僕は若い方の恩田さんに会いたいのです。いつか京橋のカフェでお眼にかかった神谷というものです」

「若い方というと、ハハア、倅のことですかな。倅なら今あいにく留守中じゃが」