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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
大きさといい、恰好といい、どうやら人間らしいのだが、人間が豹と一緒に四つん這いになって歩いているなんて、これはまあどうしたことだ。
親方がほとんど虚脱の状態におちいって、身動きする力さえなく、汗を流してそこにたたずんでいるあいだに、恐ろしい一行は空き地を横ぎり終って、左手の茂みの中へ姿を隠して行ったが、そのとき最後の洋服を着た怪物がヒョイとこちらの方を振り向いた顔、ああ、その顔の恐ろしさを、親方は一生涯忘れることができなかった。
そいつはまぎれもない人間豹であった。例のポスターの似顔絵とそっくりのやつであった。まん丸い両眼は、本物の豹よりも一そう烈しく燐光に燃えていた。そして、その恐ろしい眼の下で、まっ赤な口をキューッと三日月型にして、白い牙をむき出して、何がおかしいのか、ニヤリと笑ったのである。
そのあいだ、熊公は恐ろしい形相で喉を鳴らしつづけていたが、洋服を着た四足獣が茂みに隠れるか隠れないに、もう我慢ができなくなって、烈しく咆哮しながら、いきなり親方の手を振り切って、怪物のあとを追って飛び出して行った。鞠のように駈けて、一瞬間に空き地を横ぎり、向こうの茂みに見えなくなってしまった。