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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

「フン、二人とも声を立てないというんだね。ヨシ、それじゃいま猿ぐつわをとってやるぜ」

男は二人を抱き起こして、それぞれ彼らの括られている柱に上半身をよりかからせ、猿ぐつわをはずしてくれた。

「ハハハハハ、そんなに心配しなくってもいい。僕は大声なんか出しゃしないよ。僕はこんなみじめなざまを人に見せたくはないんだからね。助けになんかこられちゃあ、僕の方こそ困るんだよ。安心したまえ」

明智は相手の男が油断なくピストルを構えているのを見て、ニコニコしながら言った。

「ウン、そうか。なるほど、そういやそんなもんだな。明智ともあろうものが、このざまじゃあね」

男は憎々しく言って、ピストルを下げた。

「僕は君に二つ三つ尋ねたいことがあるんだが、その前に先ずそいつを飲ませてくれたまえ。なにしろ喉が乾いて仕方がないんだ」

明智と神谷とは、次々に、男の手から一本ずつの牛乳を取って、うまそうにゴクゴクと飲み終った。神谷青年は、グッタリとして、物をいう気力もない。口をきくのは明智ばかりであった。

「やあ、ありがとう。うまかったよ。ところで先ず第一に尋ねたいんだが、きのう僕をここへ案内した飯屋のおかみさんとかいう女は、たぶん君たちの仲間だったんだろうね。