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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

それとも、彼のこの異様な言葉の裏には、真実何か恐ろしい意味が隠されていたのではあるまいか。

「さて、長口上はこれにとどめ、いよいよ、喰うか喰われるか、猛獣血闘の実演をごらんに供するでござりましょう」

鞭を斜に構えて、気取ったお辞儀をすると、金ピカ猛獣使いは、舞台の隅にしりぞいて、道具方に合図をした。

「ゴーン、ゴーン、ゴーン……」

またしても鳴り響くドラの音。

舞台に走り出た八人の男は、二つの檻に四人ずつ、ゴロゴロとそれを滑らせて、舞台前方に引き出し、檻と檻とをピッタリ合わせて、厳重な金具をはめた。

大山ヘンリー氏が、またしても一歩前に進んで、丁寧な御挨拶。すると、男どもの手で、檻と檻とのあいだの二枚の扉が、ガラガラと引き上げられた。たちまちにして、二つの檻は一つとなった。

明智小五郎と神谷青年とが、浅草公園横の大通りで、タクシーを呼び止めたのが、ちょうどその時分であった。

「M町の三つまただ。料金はいくらでも出す。五分間で飛ばしてくれたまえ」

明智が車上の人となるや、運転手にどなった。

「五分間ですって! いやあ、そいつあ無理ですよ。どんなに飛ばしたって、十分はかかりまさあ」