轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

弘子はと見ると、ああ、幸か不幸か、彼女はまだ失神もしないで、真底から恐怖に耐えぬまなざしで、恩田の方を見つめている。

怪物は、両眼の燐光を燃え立たせ、歯をむき出して、ジリジリと彼女の方へ進んできた。

ああ、それから三十分ほどのあいだ、神谷は何を見、何を聞いたのであろうか。地獄の中の地獄であった。あらゆる恐ろしいもの、あらゆる醜いもの、あらゆる色彩、あらゆる動き、あらゆる音響が、彼の脳髄を痴呆にし、彼の眼を盲にし、彼の耳を耳なえにした。

そして最後に、血に狂った怪人恩田が、激情の余波のやり場もなく、跳り狂うようにして眼界を消え去ってしまうと、あとには人間の形態を失ったギラギラした色彩が乱れ散っていた。一人の女性の魂が、かつて類例もない苦悩の中に昇天したのだ。かくして神谷は、その恋人の魂と、同時に肉体をさえも、まったくこの世から失ってしまったのである。

彼はクナクナと密室の床に倒れ伏したまま、長い長いあいだ、死人のように動かなかった。からだじゅうに脂汗を流し、もみくたになった紙屑のように動かなかった。だが、やっとして、彼の肩が波うちはじめた。虫の音ほどのすすり泣きが聞こえはじめた。