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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
高が一とかたまりの布切れですもの。老人が踏み消してしまったに違いありません。それにもしあれがもとだとすると、もっと早く燃えひろがっていなければなりません」
神谷は不思議に耐えなかった。
ともかくも行ってみようと、歩き出して、だんだん森に近づくにつれ、刻一刻火焔は大きくなりまさり、彼らがそこに到着した時には、もう手もつけられない本物の火災になっていた。
パチパチと物のはぜる音、窓という窓から吹き出す赤黒い火焔の舌、ムクムクと舞い上がる黒けむり、早くも棟の一部のくずれ落ちる大音響、パッと立ち昇る火の粉、森全体が白昼のように明るく、立ち並ぶ木の幹が、みな半面を朱に染めて、クッキリと浮き上がってみえた。
「ウム、やつらは罪跡をくらますために、自分で火をつけたのだ。もう今頃はどっかへ行方をくらましてしまったに違いない。おい、誰か署へ帰って、非常線の手配を頼んでくれたまえ。それから消防だ。もうこうなってはわれわれの出る幕じゃない。ともかくも火を消すことが第一だ」
おもだった警官の命令に、一人の警官が懐中電燈をふり照らしながら、駈け出していった。
残った人々は、火焔を遠巻きにして、怪屋の周囲をグルグル歩きまわり、怪しい人影もやと眼をくばったが、悪人たちがその頃まで現場にうろうろしているはずはなく、あかあかと照らし出され