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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
いずれは君も生かしちゃおかないつもりだが、それは、もっともっと苦しめたあとのことだよ。ハハハハハ」
虎は月光に頸筋の毛を震わせて、人もなげに哄笑した。母屋の家人に聞こえはしないかと、神谷の方がかえってヒヤヒヤするほどであった。
「だが、そんなことよりも、君自身もう少し用心しなくてもいいのかね。たとえば、いま僕が大声で助けを求めたら、君の方が危なくはないのかね」
神谷はだんだん大胆になっていた。
「ウフフフフ、大声を立てるんだって? 君はそんなことできやしないよ。家族の命が惜しいだろうからね。もしここへ誰かが飛び出してきたら、おれは容赦なく掴み殺してしまうぜ」
「いったい貴様は僕になんの用事があるんだ」
「おお、そうそう、すっかり忘れていたよ。蘭子のことさ。おれは一度失敗したくらいで、あの女を諦めやしない。諦めないということを、君に告げ知らせにきたんだ。どうせ君はあらゆる防禦手段を講じるだろう。そうして君がやっきとなればなるほど、おれにとっては思う壺だぜ。つまりだね、君が死にもの狂いに守っている愛人を奪い取って、君を思う存分苦しめてやりたいのさ。ハハハハハ、じゃあ、せいぜい用心したまえ」