轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

それでなく誰が素性も知れず、背景もない佃に、そんな好意をしめすものか」

伸子は、十のものなら、大きな声でこれは十だよ、十だからそのつもりでお受取り、と繰り返し云ってからでなければ、十の親切を与えられないような母の性格を情なく感じた。あまりその声が大きいのでつい、ええ何だ! と思ってしまう。今も、苦々しい気持で、伸子は母の言葉に沈黙で答えた。

「世間に対してだって、佐々姓を名乗れば、どこの誰だか知れもしない佃でいるより、どんなに重味が増すか知れやしない。そうでもしたら、ちっとはあのひとの値打ちも出るだろう」

伸子は、むらむらとし、

「そんな値うちなんぞ、つかなくたっていいわ」

荒っぽく云った。

「佃は佃で結構よ――人間の値うちなんて――そんなことで左右されないものよ」

「お前は今目が眩んでいるからね、さぞ立派な佃に見えるだろうが」

多計代は、刺すように、ゆっくり云った。

「そうでもしなければ、少し極りのわるい御仁体だよ」

「極りのわるい人なら人でいいのよ。そんな――養子にするなんて……」

佃と自分に与えられた屈辱の感じで、伸子は顔が赧くなるようであった。彼女は、幾らか心を鎮め、母に説明するように云った。