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のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

五

そんな好みのはっきりしているところ、いかにも素子らしく、伸子は面白いと思った。

桜田門で電車を待ったが、なかなか来ない。間もなく日比谷の交叉点に故障があることがわかった。西日が、からりと打ち開いた広場を照し、停留場に待っている人物の輪郭が小さく見える。そこから、濠を伝って彼女達は三宅坂まで歩いた。柳の下を歩いていた間、日比谷の方から追抜く電車は一台も来なかった。

伸子はその散歩でも、少なからず元気づけられた自分を感じた。

五

伸子はある日動坂へ行った。母は留守であった。彼女はそれを知ると、庭木戸から隠居所の縁側に廻った。針箱が出ているが、祖母の姿はその辺に見えなかった。

「お祖母さま」

二声ばかり呼ぶと、台所から祖母が、

「誰だあ、つや子か、あがれ」

と云いながら出て来た。針箱の前に、もう上りこんでいる伸子を見出すと、彼女は一寸亢奮し、

「お前かしゅア」

と笑った。

「いつ来た? おっかさんあいにく出かけたごんだ」

「今日はお祖母さまに用があったの」

「さあ、おしき」

祖母は、自分の喜の字の祝のとき貰った厚い緞子の座蒲団を火鉢の向う側に置いた。

「おら、きのう須田から帰って来たばかりだごんだ。