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のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

――こないだのだけじゃあ、まだフィルムがあまってたもんだから」

「どれ……拝見」

「これが大学で撮ったの」

つや子が、兄とふざけて、笑いながらこちらを向いて来るところを、不意に撮ったと見え、手脚の動きが律動的で美しく見えた。

「これがこないだの。元ちゃんが少し動いたんでぼやけちゃった。――姉さん一人の方がいいや」

「そう?」

伸子は、セピアにやきつけた一枚を渡された。印画としては綺麗に仕上っていた。けれども、最初の一瞥で、伸子はその写真が、自分に相違ないのに、すらりと承知できかねる変な感じを受けた。自分と思っていたのとはどこか違うものが、正面を向いて両手を束ねた顔に漲っていた。こんな太い縦の陰翳が、二本も、もとから自分の眉の上にあっただろうか。老けた、複雑な、険しい顔つきであった。それだのに、口許ばかり、穏やかに穏やかにと、取繕われたような微笑があって、醜い顔であった。

「私の顔本当にこんな?」

ききたいぐらいであった。

伸子はつくづく自分の顔を眺めた。

いつまでも黙っているのを、和一郎は、写真に不満なのだと思ったらしい。彼は弁解的に云った。

「もう少し、全体濃くてもよかったな、この次、またやきなおして上げましょうね」