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のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

Kの芹沢さんという人」

伸子はカタログを検べ、店へ電話をかけた。月曜に届けるということであった。佃は、三度目の精密な診察で、初め怪しかった通り、左に軽微な浸潤のあることが明かになったのであった。けれども、伸子は、万已むを得なくなるまで、彼の病状の詳細は両親に告げない積りであった。そろそろかえろうとしていると、女中が呼びに来た。

「奥様が、一寸お炬燵へいらしって下さいましって」

伸子は、用向が直覚され、いやであった。しぶしぶ襖をあけると、多計代は炬燵にあたったなり首だけ振り向けた。

「時雨てきたね、何だか。――あっちじゃ、がやがやして困るから、一寸話したいと思って」

伸子は膝を入れた。

「佃の病気についてだがね。――本当に大丈夫なのかい」

「なにが?」

「――単純に喉なんかじゃあるまい?」

「なぜ?」

「いつか来た時の顔色は、どうもただじゃあないと思っていたもの」

伸子は、母に幾分の安心を与える義務を感じて、

「――いずれにしろ、ひどい心配なことはないのよ。――私がこんなにぴんぴんしているんだから、大丈夫な証拠じゃあないの。ただ、寒さに向う時候だから大事をとるのよ」