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のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

と云った。

「お前のぴんぴんは当にならないがね――何しろ困ったものだ――それで何かい、本当に一学期ぐらいで元通りになるのかい?」

「多分ね」

伸子は暗い顔で笑った。

「そりゃ人間だから分りゃしないけれど」

「しかし、もし佃が結核ででもあるんなら、それを黙って結婚するなんて、罪悪だね」

「かりにそうとしたって、前からあったんじゃあないでしょう。そう考えるのは酷よ」

「お前だって、折角健康なのに――何をするんだって体が資本だよ。国の父さんのところへは云ってやったかい?」

「そんな必要はないのよ、まだ」

「だっていろいろ……」

金のことであるのが伸子に推察された。

「本当に大丈夫なの、――」

伸子は炬燵蒲団をはねた。

「じゃあ今日は失礼するわ、いろいろ有難う」

「そうかい」

多計代は未練らしく自分も立ちかけた。

「本当に気をつけなけりゃいけないよ。お前まで変なものを背負い込んだら、家じゃお断りだよ」

部屋を出がけに、彼女は皮肉に呟いた。

「――まああの人にすれば、却って都合がいいというもんだろう。こうなると、出ろと云っても出られるお前じゃないんだから……」

伸子は母が憎々しく、しかし真実を云い当てたのを感じた。