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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

これほど厳重な秘密会議は数ヶ月来例のないことである。会議半ば午後五時頃、一度だけ密閉された大扉が開いた。そして、その中へ立入る光栄を与えられたのは高橋少年ともう一人の給仕であった。屋内電話によって、航空技術本部長自身の口から、七人分のサンドイッチと紅茶が命ぜられたのである。

二人の少年は食堂から、大きな盆にのせた紅茶とサンドイッチを会議室に運んだ。高橋少年は、こういう場合の会議室内の光景に慣れていた。そこには一種のお芝居ともいうべきものが演ぜられているのを常とする。会議の参列者達は、それが真剣な会議であればあるほど、給仕などの入って行った時には、フッツリと密談をやめて、取ってつけたような冗談を取交わし、さも呑気らしく笑い興じているのである。日頃真面目な陸軍大臣の口から、思わず吹き出すような洒落が飛び出すのは、必ずそういう場面においてであった。

ところが、今宵は全く様子が違っていた。談話がフッツリ途切れたのはいつもの通りであったが、予期した冗談をいうものは一人もなく、一座はシーンと静まり返っていた。日頃物に動ぜぬ高官達の顔が、何事かただならぬ興奮に青ざめているかとさえ思われた。