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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

新一は勝手口から屋内に飛び込むと、階下の食堂に走って、ドアを開いた。

「みなさん、今怪しい奴が暖炉の煙突から設計室へ忍び込んだらしいのです。設計室には誰もいなかったのでしょう」

「誰もいない。二十分ほど前から空っぽだ。だが見張りがいる。山下君がいつもの部屋から、見張っている筈だ」五十嵐老博士が叫ぶように答えて、もう立ち上っていた。山下というのは今一人の憲兵下士官である。

「ところが、曲者は廊下を通らなかったのです。煙突から忍び込んだのです」

「馬鹿なッ、設計室の暖炉はちゃんと板で塞いである。忍び込める筈はない」

「とも角、行って調べて見ましょう」

新一はそのまま裏階段を駈け上った。食堂の人々も捨てておくわけには行かず、五十嵐博士を先頭に、それにつづいた。階段を登った所に山下憲兵の小部屋がある。その部屋の扉を開けば、設計室前の廊下を一目で見渡すことができる。扉はいつも開いたままである。

「山下君、われわれが食事に降りてから、この廊下を通ったものはありませんか」

南工学博士が部屋を覗きこんで訊ねた。京子の兄さんである。

「誰も通りません。自分は絶えず見張っておったですから、間違いありません」