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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
火焔放射器
私達はまんまと騙されていたのかも知れません。
それに、あいつの突飛な気違いめいた所業も、実はわれわれの目をあざむく一つの手段だったかも知れないのです。ああして変り者だ、気違いだという風に見せつけておけば、逆手の迷彩になるわけですからね。警察の御厄介になって事なく放免されるというのは、大きな犯罪を企らむ者にとっては、一つの逆手ですからね」
北村刑事は、如何にも残念でたまらぬという様子であった。
火焔放射器
愛宕警察署を訪ねて署長に面会し、事情を話すと、丁度折よく韮崎の住居の近くの交番詰の巡査が居合せているというので、署長はその巡査を三好憲兵達の前に呼んでくれた。
「韮崎をお調べになるのでしたら、余程うまくやらないと、あいつ、突拍子もない男ですからね。そうですね、ああいいことがあります。あの町会は今夜八時から防空訓練をやることになっているのですよ。韮崎は群員です。必ず出て訓練に参加します。何しろ変り者ですからね、気が向けば何を始めるか分ったものじゃありません。今までまるで交際をしなかった隣組とも、近頃はよろしくやっているらしいのです。まるで軽業師みたいに身軽な男ですから、防空活動には最適任ですよ」