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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

腹が空った」

「その問題じゃない」

「何だい?」

「分っているじゃないか? 帰りに剛健質実の気風を養おう」

「いけないよ」

と僕は無愛想に郤けた。

お昼はいつも学校の近くの喫茶店で認める。そこへ行って席についた時、僕は一応注意して置く積りだった。教室の怠け振りが目に余ったのである。

「君、剛健質実の気風を養わなければ困るよ。この際殊に」

と菊太郎君は僕の心持が分らない。しかし先方から問題に触れて来たのは言い聞かせるのに丁度好い都合だった。

「冗談じゃないぜ」

「何故?」

「些っと慎み給え」

「しかし君は犬馬の労を引受けてくれたじゃないか?」

「如何にも引受けた。それだからもう乃木坂へはお供をしない」

「デレンマだね、これは些っと」

「その通り君は頭の中が混線している」

「何うして?」

「パラドックスってものだ」

「大同小異だろう。何故そんなパラドックスの角に乗るんだい? 意地が悪い」

「パラドックスは角なんかないよ。あれはデレンマの角だ」

「揚げ足を取るなよ」

「君はその通り万事上の空だ。少し落ちついて考えて見給え。僕は君に成功させたければこそ、慎重の態度を執るんだ。もう乃木坂は御免蒙る」