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かちうんまけうん
勝ち運負け運
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页
幼少の思い出
幼少の思い出
隣り同士の僕と菊太郎君は妙な因縁だ。凡そ仲の好い友達といっても、僕達二人のようなのは類があるまい。三十余年間、始終一緒だった。学校も一緒、商売も一緒、何方か病気をしない限り、毎日顔を合せて来ている。同業のものは僕達のことを御両人と呼ぶ。僕も菊太郎君もそれに異存は毛頭ない。
「羨ましいね、御両人は」
「若旦那同志のお神酒徳利だ。そのまゝじっとして並んでいさえすれば、今に時節が廻って来る」
「男は好いし、金はあるし、御両人は兜町切っての果報者だよ」
こういう評判も有難い。しかし、
「御両人は何方だろうな? 結局」
と言われると、僕達は胸の鼓動が高まる。お互に負けまいという気がある。御両人はそれを常に意識していながら、隠し合っている。特別に親しい同志が何かにつけて張り合うのは真に厄介なものだ。
手近い例を挙げれば、一緒に銀ブラをして、カフェーへ入るとする。女給達が二人を取巻く。兜町の若旦那は会社員や新聞記者とは違った香がするのらしい。僕は特別に女が好きという次第ではないが、一番綺麗なのに目を留めて、其奴がどれくらい菊太郎君に好意を持っているかを考えて見る。